速記講座【28】 ヲコト点

 日本にはもともと文字がなく、中国から漢字を取り入れて、我が国独特の漢字 仮名交じり文ができ上がってきたわけですが、その初期に漢文を日本語として読 み下すために漢字の周囲等に添えた符号を「ヲコト点」と言いました。

 符号の位置と形とによって読み方を定め、片仮名がまだ十分発達していなかっ た平安時代初期に、漢文により知識を得て学問を修めるために、文書も傷まず 「速く記入できる符号」として発達したものだそうです。

 平安時代に広く行われ、鎌倉時代以後に片仮名の字体が統一され、一般に広く 使われるようになると、次第に行われなくなくなったようですが、これはまさし くその当時の「速記符号」ということでしょうね。

 現代の速記でも、このような位置を利用した書き方があります。速記の場合は さらにスピードが要求されるので、数音の言葉に当てはめ、しかもその点の位置 から次の速記文字を書き連ねます。そうすれば、非常に効果的に簡略化されるわ けですね。

 以上、速記の「ヲコト点」と一部「常用語」をお示ししましたが、必ずしも全 部使わなくてもいいんですよ。「速記講座(22)」までの内容を習熟すれば、個 人利用には十分過ぎるほど十分です。

 新しいものを使いこなすには、それ相応の練習をして自分の持ち駒にしなけれ ばなりません。中途半端に覚えているだけだと詰まってしまって、かえって遅く なる場合の方が多いものですからね。

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 ところで、助詞のことを昔の人は「テニヲハ」という言い方をしていましたが、 そのいわれをご存じですか。
 これも「ヲコト点」から来ているんですよ。4隅の点を左下の点から上へ、そ して右回りに読んでいくと−−ちゃんと答えになっていますね。