速記講座【20】 「ながし」は「短く」

 前々回は「ながい」は「ながす」と説明しましたが、今度は「ながし」は「短 く」です。これはどういうことでしょう。

 速記で線を流すというと、初心者はどうしても書き始めから思い切り勢いよく、 線をはじいてしまいやすいんですね。そうではなくて、線の最後を軽く力を抜く ような感じで、筆記具を紙面からほんの少し上げて、次の線との間に空白をつく るんです。

 これは単群(速記文字の一固まり)をほぼ同じ速度で書き上げるということに も通じます。

 速記文字は、一線一線を勢いよく書いてはだめです。そうすると、一線ずつが 書き始めの速度0から最大速度になり、また急停止で速度0になります。そして、 次の一線を書くときにも同じ作業をします。つまり一線を書くごとにそういう作 業を繰り返すことになるわけです。

 そうでなくて、普段、一つ一つの平仮名を素早く書くのと同じような調子で一 つ一つの単群を書き上げるわけです。

 そしてさらに、その単群から単群に移るときも同じことです。手に力が入り過 ぎると、余分な動きをつくってしまうということですが、ここら辺が速記は知識 でなしに技能であるというところでしょうか。練習を重ねることによって、む り・むら・むだな動きが消えていくわけですね。

 きょうは、「速記」という漢字に惑わされて勢いよく書くのは、かえって速記 文字に余分な動きがふえ、乱れて書きにくく読みにくくなるというお話でした。