速記講座【38】 名作で学ぶ速記(2)

引き続いての名作冒頭シリーズです。

 「吾輩は猫である」夏目漱石
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吾輩は猫である。名前はまだない。
 どこで生まれたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめしたところでニ ャーニャー泣いていたことだけは記憶している。吾輩はここではじめて人間とい うものを見た。しかもあとで聞くとそれは書生という人間中で一番獰猛な種族で あったそうだ。この書生というのは時々我々を捕まえて煮て食うという話である。 しかしその当時は何という考えもなかったから別段恐ろしいとも思わなかった。 ただ彼の掌に載せられてスーと持ち上げられた時何だかフワフワした感じがあっ たばかりである。掌の上で少し落ち着いて書生の顔を見たのがいわゆる人間とい うものの見始めであろう。この時妙なものだと思った感じが今でも残っている。


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(1)  吾輩は猫である。名前はまだない。            
(2)  どこで生まれたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗い    
(3)  じめじめしたところでニャーニャー泣いていたことだけは記憶している。 吾輩はここで
(4)  はじめて人間というものを見た。しかもあとで聞くとそれは書生という人 間中で一番
(5)  獰猛な種族であったそうだ。この書生というのは時々我々を捕まえて
(6)  煮て食うという話である。しかしその当時は何という考えもなかったから
(7)  別段恐ろしいとも思わなかった。ただ彼の掌に載せられて 
(8)  スーと持ち上げられた時何だかフワフワした感じがあった
(9)  ばかりである。掌の上で少し落ち着いて書生の顔を
(10) 見たのがいわゆる人間というものの見始めであろう。この時妙なものだと
(11) 思った感じが今でも残っている。 (夏目漱石)

(「それ」は小半円の下側、「この」は小半円の右側)