速記講習会におけるアンケート

主  催: 中根式速記協会北海道支部
日  時: 昭和48年6月21日〜23日
場  所: 北海道立○○商業高校
対  象: 同校速記部員(女子17名 1年生、3年生)
講習内容:
      21日(木)速記史の基礎、速記方式の基礎
      22日(金)速記術(速記の実演:分320速字/北海道知事の答弁)
      23日(土)中根式速記法(速記の基本教程)
      ※23日は土曜日で卒業生も数人参加。
講  師: 私


初めに
 中根式速記協会北海道支部は昭和22年ごろから活発な活動をしていたようです。 昭和35年9月まで支部活動しておりました。
 私は昭和43年11月から北海道支部の再活動について山崎 昇支部長(故人・昭 和13年の全国大会に参加)と相談をしておりました。
 第一段階として、昭和47年12月1日に「中根式速記学指導者用教範」(B5版 256ページ)が中根式速記協会北海道支部から発行されました。中根速記学校で 指導された速記法則を中心に組み、各地の速記法則をかき集めたものです。
 第二段階として、戦前に山崎支部長が在学中に創設された道立○○商業速記部 の部員を対象に速記の講習会が行われました。
 山崎支部長から、講習会の内容はすべて任されました。
 私は高校時代に同級生及び後輩(男ばかり)にクラブ活動では早稲田式を指導 していましたが、中根式の指導者として正式に速記の指導をしたのは生まれて初 めての経験でしたので、私の方が上がってしまいました。
 何をどのように指導をすればよいかと1ヵ月以上前から講習会の指導計画を立 てておりました。予め、速記部員には指導する法則内容を連絡しておいた方がよ かったと思いました。
 中根式速記協会北海道支部主催ですから、講習料は無料です。私自身の「速記 指導法の研究」として、指導実習のつもりで行いました。当時は若干22歳という 若さでした。
 現在、「中根式速記協会北海道支部」がありません。
 1日目は、私が作成した「講習会速記資料」(昭和48年5月作成 B5版19 ページ)を使用しました。必要な部分は空白にしております。空白の部分は板書 しております。
 2日目は、速記術ということで、前半は3年生に「読み返しなし」の実演をし てもらいました。後半は私が分速280字と分速320字の実演をして読み返しました。 その後に北海道知事の答弁(分速200〜240字程度、ラジオで道議会の本会議を放 送していたものを録音)を10分間速記して読み返しをしました。
 3日目は土曜日でしたので、時間を4時間ぐらいとり、「中根式速記学指導者 用教範」を10部配付しました。2人で1冊の資料を見ておりました。中根洋子著 「中根式 速記の基本教程」に掲載されている部分の速記法則を指導しました。 3年生はインツクキ法まで学習済みでした。3日目は3年生だけを対象にして行 えばよかったと思いますが、全速記部員の「やる気」を感じました。

 3日間の講習会が終了してから全員に無記名で「アンケート」を書いてもらい ました。30年以上経過しておりますが、当時の速記部員の回答を紹介しましょう。




速記を始めた動機

●中学校に速記のクラブがなかったし、おもしろそうだから。
●中学のときから、字を早く書くことができる速記にあこがれていた。だから、 高校へ来てから速記部があるとわかったとき、すぐに入った。早く言えば、人の 話していることでも、みんなのわからない文字を使ってスイスイ書きたい。
●本などで知り興味を持った。
●おもしろそうだから、友達に勧められて。
●友達に誘われて。
●他人と違う文字を書くことができるということに引かれた。それに興味を持っ た。
●特技を身につけたいから。
●おもしろそうだから。
●自分の特技にしたかった。実用的であるから。
●自分の思ったことを早く書けるということは、すばらしいことだと思った。前 から興味があったのでやりたいと思っていたところ、身近に速記のクラブがあっ たので。
●初めは、何となくやっていたが、クラブをしているうちに速記がおもしろくな った。
●興味があったので。
●中学のとき雑誌を見てやりたいと思ったのがきっかけで高校に入って、クラブ があるのを知り、3年間やった。目的はなかったけれども、速記というものに興 味を持った。
●おもしろそうだと感じたから。
●興味本位。
●自分自身に特技を持つことが第一の目的として、第二は何か役に立つと考えた から。
●速記に興味を持ったから〈姉がやっていたので〉

速記はやさしいか
 やさしい  0
 難しい   15
 わからない 1
その他
 やさしいと思っていたが、この講習会で難しいものだと思った。

速記をやってみた感想
 よかった  14
 わからない 3

速記の必要性
 必 要 17
 不必要 0

帰宅後の練習について
 している  2
 していない 13
 ときどき  2

練習をしている者
 30分以内 3
 そのときにより、1時間以上やるときと、10分でやめるときがある。

速記の活用法
●人に見られたくないものを書くとき。
●まだ使うまではいかない。
●基本文字を覚えたばかりなので全然使っていない。
●メモをするときなどに使っている。先生のちょっとした話など。
●簡単なメモ、日記等。
●日記。
●クラブ。
●特に使っていない。
●日記、1人ごと。
●授業中の落書きや日記など。
●別に使っていない。使うと言ってもほんの少ししかわからないので。
●クラブだけ。
●使ってはいない。
●授業中のノート、日記。
●電話を受けて、その用件を書く。
●電話などのメモに使っている。
※無回答 1

速記はおもしろいか
 おもしろい   13
 おもしろくない 2
 無回答     2

今後の目標
●自分の速度を上げること。北日本大会に入賞すること。後輩を私以上にするこ と。
●もっともっと練習して、うんと早く書けるように努力したいと思っている。
●もっと速度が増すように努力したいし、クラブを活発にしていけたらいいと思 う。
●検定に受かること。北日本大会。
●できるだけよい級で卒業したい。北日本大会。
●早くうまくなりたい。
●いろいろな書き方や、歴史について知識を深めたいと思う。
●いろいろな大会に出て、いろいろ見てきたい。
※無回答 9

北海道支部に対して
●もっと目立つ活動をしてほしい。余り人の知られなさ過ぎるような気がする。
●時々、このように講習会に来ていただきたいと思う。
●中根式をもっと普及すべきである。(宣伝を豊富にするとか)
●速記の問題集など。
●これからも、いろいろとご指導をいただきたいと思う。例えば、新しくできた 方法や、たやすく書くことができる方法。
※ない 10

講習会の内容
 理解できた  0
 何となく   13
 理解できない 0
●理解というよりも速記の広さを知った。
●1、2日は大体できた。3日目は全然できない。(2名)
●後ろの方ができなかった。

3年生の実演を見学して
●私も、あのように早く書けるようになりたいと思った。
●とても早くて、自分に書けるかと思った。難しいことだ。
●とても早く、これが本当の速記だと思った。とても気が遠くなる。
●すごく早く書くな〜と思った。でも少し字をごまかして書いているところがあ るように思った。
●よくあんなに早く書けるようになるんだな〜。(ただそれだけ)。私も、あん なに早く書けるようになりたい。

講習会の必要性
 必 要 17
 不必要 0

次回の講習会に対する要望
●短い時間で多くのことを話すのであるから、やむを得ないが、もう少しゆっく り話してほしい。うまく言えないが、とても早く資料が十分でなかったので、そ の点ちょっとわかりずらかったと思う。
●もっと詳しく省略法や助詞などのつけ方を教えてほしい。
●もっと効率のいい速記の練習の仕方、暗記法。
●略字のでき方などを教えてほしい。
●普段使う日常語など。
●もっと時間をかけて教えてほしいと思った。
●細語。
●速記のいろいろな書き方(今回のようなもの)
●ゆっくり省略形など。
●今度はゆっくり、いろいろなことを教えて欲しい。
●もっと広範囲の速記について。

講習会の感想
●自分の未熟を感じた。
●余り早くて、何だか理解できなかった。最後の日は特に全然わからなかった。
●中根式の起こりや、省略形などの理由が少しわかった。
●今まで知らないことなどがあって、いろいろと勉強になった。でも、少し早口 なので、余り発言がよくわからなかった。
●進のが早くて、納得するまでに達していない。
●3日間は全然わからなかった。初めはきちんと聞いていたのだけど、全然習っ ていないし、わからないことばかりだった。
●3日目は、3年生だけでよかったと思う。
●速記についての知識がまるでないということに気がついた。今までは、ただ練 習しているというだけであったような気がした。刺激されてやる気が起こった。
●自分の技術の未熟さを感じた。
●まだまだ早く書けることを知った。
●余り、習っていない文字ばかりでついていけない点が多かった。
●毎日、まじめにやっていれば、速度も上がるだろうと思いました。機会があれ ば、ぜひやってもらいたい。
●余り私たちが未熟なので、お役には立てなかったと思う。これからも大いに頑 張る。

その他
●商業に速記のできる先生が欲しい。私たちと一緒に速記をやる先生。それと、 もっと速記を広めてほしいと思う。機会があれば、またどこかで速記をやりたい と思う。
●今後も、講習会をどんどん開いて、速記を広めてほしいと思う。


 アンケートの回答は以上ですが、その後の速記指導においていろいろと参考に なりました。
 アンケートの回答を見ると、速記の実演は初心者にとっては効果があります。
 速記学習者は、自分たちが練習している速記文字がどの程度まで書けるのかと いう不安もあると思いますし、目の前で実演をすることによって、練習次第では 早く書けるようになることが実感できるからです。
 また上級生の速記法則における指導力にも関係してきますが、速記部の顧問が 速記を知っていれば問題はありませんが、速記を知らない顧問だと上級生が下級 生を指導するので、年度によっては速記法則が伝わらない時期が出てきます。
 過去に中根式速記協会北海道支部で行ったように、支部の指導担当者が速記法 則を指導できる体制づくりも大切なことだと思います。

 特に高校の速記部員に対して「速記史」及び「速記方式」の基礎を指導した、 指導者はいないと思います。速記法則のみならず、「速記史」及び「速記方式」 の基礎的な指導をする時期を選ぶことも大切なことです。1年間は速記法則を指 導して速度練習に集中して、ある程度、速記のことが理解できた段階で「速記 史」などを指導すべきだと考えております。

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